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高校生 数学をなんとなく

長岡 『東大の数学入試問題を楽しむ』を読んでみた

「読んでみた」シリーズについては以下の記事をご覧ください.

f-mathnote.hatenablog.com

「読んでみた」シリーズ最初の記事です.

 

オリジナル版はこちら↓

f-mathnote.com

出会いの経緯

私が現在通っている高校の図書委員会には,図書購入班というものがあります.

 

この班に入るとなんと!

自分の好きな本を書店で選び,学校図書館の蔵書に加えられるのです!!

 

もちろん本の購入にかかる代金は,学校の経費として落ちます.まさに一石二鳥.

この本とは,その図書購入班として,私が丸善を訪れたときに出会いました.

 

この本の著者である長岡亮介氏は,東進ハイスクールのカリスマ数学講師である長岡恭史の兄で,自身も駿台のカリスマ数学講師として活躍していました.

 

私は東京大学が第一志望ではありませんが,「本質的で興味深く面白い」問題を毎年入試問題として出題する,東京大学「一種のひねくれ根性」を味わいたいと思い,この本を選びました.

この本について

基本情報

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タイトル:東大の数学入試問題を楽しむ 数学のクラシック鑑賞

定価:2200円(税抜)

発行年月:2013年2月

判型:A5判

ページ数:304ページ

内容紹介

東大の入試問題は、数学的奥行き・広がりをもった良問が多い。すなわち“古典”である。単に解法を知るのでなく、入試の古典から「之を知る者は之を楽しむ者に如かず」の精神を学び、真の“数学力”を身につけよう。

著者

長岡亮介

1947年 長野市生まれ

1977年 東京大学大学院理学研究科博士課程を満期退学,数理哲学,数学史を専攻.

その後,津田塾大学助教授,大東文化大学教授,放送大学教授を経て,明治大学理工学部数学科特任教授.2017年退職.

現在,若手数学教育者を支援する組織TECUMを主宰.(2020年4月現在)

こんな人にオススメ

本文中に登場する東京大学の数学入試問題は,あくまで「本文の補助」なので,数学が得意でない方や嫌いな方,内容を忘れてしまった方でも十二分に楽しめます.

もちろん,数学ⅠAⅡB履修済み(高校1~2年生程度)だとより楽しめます.

 

本書を読むうえ必要なものは,「自分で考え抜く力」ただ一つです.

 

よく学校の先生は

「10分考えてわからなかったらそれ以上考えても無駄だから答えを見よう」

と言いますが,私からしたら

それは全くの見当違い

です.

 

考える時間・考え続ける時間は,一分一秒あなた自身の宝になります.

もちろん入試などの時間制限がある場では,より柔軟に,問題を処理する能力が必要だとは思いますが.

感想

まず伝えたいのは,

参考書・数学書の垣根を越えて,すべての「教育をする者」「教育を受ける者」にこの本を読んでほしい

ということです.

 「数学とは,どんな世界なのであろう?」「数学を学ぶことには,どんな意味があるのだろう?」「数学が好きになるために,何をしたらよいのだろう?」――本書は,筆者が,これまでに何度も訊ねられ,一度もうまく答えることができていない,このような,「ふつうの人」からの質問に答えるための試みである.

――― 長岡亮介著「東大の数学入試問題を楽しむ はじめに」より引用

これは,冒頭に書かれている筆者のねらいです.

 

本書は上記の問いかけに対して,明確に答えているわけではありません.

しかし一読したらわかるように,本書のあらゆるところで「筆者の考え方の一つ」や「筆者の回答の一つ」がちりばめられています.

ある種の「寓喩」です.

 

そのような問いに対する「実体の持たない,輪郭のつかめない」答えを,東大の数学入試問題を絡めた物語を通して伝えようという気概が,この本から感じ取れました.

 

「良い問題を1題作る」のは「良い曲を1曲作る」のと似ている

と,聖光学院時代の同級生である元オフコース小田和正氏が本の帯に寄せています.

 

上記の内容紹介では,数学に焦点を当てていますが,個人的には,数学の本というより,哲学的・思想色が強めな本だと感じました.それ故「大学受験参考書」としては賛否あるものと思われます.

しかし,この本に書かれている「数学の考え方」は,職業数学に限らず,大学受験にも役立つことを私が保証いたします.読んで,考えて,"絶対に"損はしません

 

私自身数学をやっているときに,

「なぜ私は数学をやっているのか?」

「私より才能に恵まれている人が限りなく多く存在するのに,私が数学をやる意味はあるのか?」

などと考えることが(現在も)あります.

そんな私に,少しの勇気と自信を与えてくれたのが,この本です.

 

ここで私も著者になったつもりで,上記の問題に対する回答を与えてみたいと思います.

 

数学は「自然科学と哲学の緩衝材」です.

緩衝材であるからこそ,科学者は数学を用いて現象の説明に勤しみ,哲学者はゲーデル不完全性定理自然数論の理論が不完全であること)に代表される数学の基礎に魅了されます.

 

This book is written in the mathematical language.

これは,ガリレオ・ガリレイが残したとされる格言です.

 

私は「あらゆるものが数学で出来ている」というような過激な主張はしませんが,

この世界を極度に抽象化した先に数学がある

と考えています.

 

数学は「芸術」でもあります.

世界を抽象化したものだから,人間は数学に対して何らかの魅力を感じますし,数学はある種の芸術として成立するのです.

 

これが,私の考える「数学」です.

 

--閑話休題--

 

これからは本文中で印象に残った話を,全41話の中から3話(digest版では1話)pick upしてご紹介します.

 

第9話 理系 vs. 文系?!

高校生にとって「理系か文系か?」という問いは,様々な場面で登場する,とてもセンセーショナルな議題ですね.

 

どちらが「優れているか(頭が良い,能力が高いetc.)?」などを,理系文系で区別して考えている人も一定数います.

また「理学部は就職無理学部」「数学が苦手だから文系」などのステレオタイプ思考が,日本では至る所に見られます.

(現在私が通っている学校でも,「理系・文系の"見えない壁"」が絶賛建設中.)

 

実際にそうでしょうか?

筆者はスノー著「2つの文化と社会革命」の有名な箇所を原文で引用して,このように述べました.

A good many times I have been present at gatherings of people who, by the standards of the traditional culture, are thought highly educated and who have with considerable gusto been expressing their incredulity at the illiteracy of scientists. Once or twice I have been provoked and have asked the company how many of them could describe the Second Law of Thermodynamics. The response was cold: it was also negative. Yet I was asking something which is about the scientific equivalent of : Have you read a work of Shakespeare's ?

I now believe that if I had asked an even simpler question ー such as, What do you mean by mass, or acceleration, which is the scientific equivalent of saying, Can you read ? ― not more than one in ten of the highly educated would have felt that I was speaking the same language. So the great edifice of modern physics goes up, and the majority of the cleverest people in the western world have about as much insight into it as their neolithic ancestors would have had.

「数学が苦手だから文系」「英語が嫌いだから理系」といった進路選択が一部にあると聞くが,そのような主張が馬鹿げていることを知ってもらうためには,こういう「英語」で「理解」するとはどういうことなのか考えていただけば十分であろう.実際,単なる英語好きの「文系」ではスノーの嘲笑の的になるのが関の山,単なる「理系」では,この程度の短文ですら手も足も出ないであろうからだ.

(中略)

実は,今日,「理系 vs. 文系」という分類自体が,すでに古くさい.

――― 長岡亮介著「東大の数学入試問題を楽しむ 第9話」より引用

文章の通り,単なる数学好きの「理系」である私は,この英文に手も足も出ませんでした.反省

知識の細分化が進んだ現在,スペシャリストは地球上に数えきれないほど多く存在します.

 

生物学も「細胞生物学,分子遺伝学,分子生物学,進化生物学,生態学」などの分野に細分化されていますね.

このように,現在の学問は縦方向に深くなっていますが,横方向のつながりが失われてしまう可能性を常に孕んでいます.

 

昔の偉人たちは,いろいろな学問を兼任していました.

アルキメデスは,数学者,物理学者,技術者,発明家,天文学者であり,

レオナルド・ダ・ヴィンチは,音楽,建築,絵画,数学,解剖など,様々な分野で顕著な成果を残しています.

 

昔は現在ほど学問が専門性を帯びていませんでしたが,それでもなお,幅広い教養の大切さは今も訴えられ続けています.

大学1年次などの教養科目の必要性はここにあるのでしょう.

 

グローバル化,機械化,AIの進化が進む中で,人間として本当に必要な能力とは何なのか?

是非皆さんも,この本を手に取って一緒に考えてみませんか?

 

手引き

この章では,本書に載っている問題の解答とは違う「オリジナルの別解」について紹介・解説していきます.(digest版では,問題を解く際のキーポイントのみ紹介します)

第41話 小さなムラを出て《大きな世界》へ

1996年度理科第3問

問題は著作権の都合上,下記のリンク先でご覧ください.

東大理科 1996前期 3

(1)は,球面上の接平面より上側が,その点から見える空間です.(問題の文末にもきちんと数学的に定式化されています)

私たちの感覚と経験からも,これは正しい定式化ですね.

 

問題は(2)です.

リンク先の解答例では,適切な式変形をある意味愚直に施していき,答えを求めています.

 

しかしこの解答だけで終わるのはつまらないので,もう一つ「直感的で面白い」別解を与えようと思います.

 

キーポイントは

 

「S上の点Pから立方体の頂点を見るのではなく,立方体の頂点から見える範囲を球面S上で描写する」

です.

 

気になる方は,ぜひオリジナル版へ遊びに来てください!

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まとめ

  • 東京大学を目指す人にはもちろん,全人類に読んでほしい本.
  • 「数学」の本質を探し出す,壮大なストーリー
  • 現代社会への問題提起から学ぶ,多種多様な観点

最後までご覧いただきありがとうございました.

次回の記事もお楽しみに!

参考文献

東大の数学入試問題を楽しむ(本) - 日本評論社

東大の数学入試問題を楽しむ|日本評論社

https://www.nippyo.co.jp/shop/book/6116.html

長岡亮介 - お茶飲みwiki

https://pchira.wicurio.com/index.php?%E9%95%B7%E5%B2%A1%E4%BA%AE%E4%BB%8B